世間では2月15日の杉並区議会での小林ゆみ区議の発言が話題となっています。ここ数年でメディアでの露出度が増えたLGBTに関する小林区議の発言のどこが批判の的となったのかを考えていきたいです。
問題となった小林区議の発言の映像は以下のリンクからどうぞ
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そもそもLGBTとはレズビアン(Lesbian;女性同性愛者)、ゲイ(Gay;男性同性愛者)、バイセクシュアル(Bisexual;両性愛者)、トランスジェンダー(Transgender;性別違和)という4つの言葉の頭文字を併せた言葉であり、性的マイノリティを包括する言葉でもあります。
小林区議がレズビアンのことを「レズ」、バイセクシュアルのことを「バイ」と発言していましたが、このように省略すると差別用語となってしまうので正式な名称で発言することが当然望まれます。小林区議はLGBTの話題を取り上げたのにも関わらず、こんな基本的なことも知らずに区議会で差別用語を連発していて恥ずかしいというより情けないです。これが批判された1つの理由です。
次に小林区議が発言されたように、LGBTには大きく分けて「性的指向」と「性(的)自認」に分けられます。「レズビアン」、「ゲイ」「バイセクシュアル」などが前者を指し、「トランスジェンダー」などが後者を指します。性的指向はどの性別を恋愛の対象にするのかというものであり、おおまかに「異性愛」、「同性愛」、「両性愛」に分けられます(「無性愛」といって性的指向を持たない人もいる)。「性的指向」という言葉が「志向」や「嗜好」ではなく、「指向」という字を使うのは、人を好きになる感情は自ら選んで「志す」ものではなく、「趣味」や「好み」の問題ではないからです。しかし、小林区議はこの「性的指向」を「性的志向」や「性的嗜好」と混同しており、「個人の趣味」と発言したことに批判を浴びています。
少し細かくなりますが、小林区議はトランスジェンダーは「医師の認定が必要な明らかな障害であると言えます。」と発言していますが正確には違います。トランスジェンダーとは広い意味では、肉体的にははっきりと「男」「女」でありながら、自らの性別に対する違和感を持つ人のことを総称する言葉です。一方、性同一性障害は、身体の性に違和感を持つ人が治療を必要とし、診断基準を満たした場合、その診断名が「性同一性障害(GID=Gender Identity Disorder)」です。性同一性障害が医学的疾患名であるのに対し、トランスジェンダーはLGBTの当事者自らが、自己のありようにプライドを持って呼ぶ時に使われることが多い言葉です。性同一性障害などを包括した言葉がトランスジェンダーであるので、トランスジェンダーが「医師の認定が必要な明らかな障害であると言えます。」とは言えないのです。一般的にもここはあまり理解されていませんが区議会で発言するのであれば、この違いをはっきり理解しておくべきだと思います。
このような発言をしてしまった為に批判に晒されることとなってしまいましたが、小林区議は評価されるべききちんと問題提起の発言も行っています。
1つは「同性パートナーシップに関する渋谷区の条例、世田谷区の要綱は憲法第24条、94条に違反している疑いが強く指摘されています」という発言です。憲法第24条では婚姻は、両性の合意にのみ基づくとされており、この両性というのは「男性」と「女性」を指しており、同性同士は認められていないという主張です。憲法が作られた当時は同性婚について強いネガティブなイメージがあった時代なので、両性とは男性と女性を指しているという主張は正当性があると思います。憲法第94条では「地方公共団地は、その財政を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる」とされています。憲法や法律を守っていない条例は制定できないのです。つまり、同性カップルを結婚相当の関係と認める渋谷区や世田谷区の政策は憲法第24条と憲法第96条に違憲しているという主張です。
確かにその通りだと思います。なので僕としては憲法改正をして憲法第24条で両性のみならず同性も認めるように憲法で明記した方がいいと思います。そうすれば自ずと憲法第94条の違憲の恐れもなくなります。
もう1つの小林区議の評価されるべき問題提起は、「同性愛自体が犯罪とされている海外と比べると日本では差別が少ないが、それは国民がLGBTに対するきちんとした知識を持っておらず、そもそもLGBTを知らないからだ」という旨の発言で、日本においてLGBTが認知されていない現状を問題視したことです。確かに近年LGBTという言葉はメディアで扱われる機会が増えていますが、テレビをとってもLGBTの当事者たちは「おねぇ系タレント」という「キャラ」として扱われており、LGBTの実態とは程遠いと言えます。それゆえ、社会でもLGBTは面白いキャラの人たちという認識しか持たず、まさか自分の身の回りにLGBTの当事者が存在するなんて思っても見ない人が多いのではないでしょうか。
今回、小林区議は区議会でLGBTという話題を扱い、世間の関心を高めてくれました。期待が大きかった故に小林区議のLGBTをきちんと理解できていない発言に世間の批判に晒されてしまったのだと思います。これを機に、小林区議はLGBTについてもっと勉強して、是非ともLGBTの当事者にも住みやすい街を作るようにこれから深い議論を進めてほしいとおもいます。もちろん、私たち国民一人ひとりもLGBTに対して真摯に向かい合わなければなりません。小林区議が発言したように、LGBTと一括りにするのではなく、LGBTの当事者一人ひとりと向き合って「生きづらさ」が無い社会を目指したいです。
コメント
小林議員の発言でもっと非難されるべきは、後半でアメリカ(キリスト教で訴訟社会)の特殊な例を例示して、一般の人に同性愛者への恐れをさりげなく刷り込んでいるところだと思います。
また、『同性愛自体が犯罪とされている海外と比べると〜』日本はきちんとした知識がないと発言していますが、同性愛者を犯罪としている国には『きちんとした知識』なんてないですよね。
小林議員はLGBTを可視化したいというよりも、LGBは困ってないんだから静かにしておきなさいとおっしゃっていると感じました。
中東など海外の一部の地域では同性愛を犯罪として扱い、「きちんとした知識」はないかもしれませんが、全く同性愛に無関心な人が多い日本もきちんとした知識がないと言わざるを得ないと思います。差別するのも無意識なのも同様にきちんとした知識がないのです。
正直、私自身も小林区議には良い印象が全くありませんし、仰る事もその通りだと思います。それでも不幸中の幸いにもこの件が世間の目に触れるようになったので是非ともこの件に関して議論を深めたいですし、san Noeさんのように知識がある方が1人でも増えればと願っています。